寒い日は・・・
「黄瀬、そっちはどうだ?」
「もうすぐ終わるっスよ」
バスケ部の主将とエースが黙々と片づけをしている。
時折、笠松の後輩を気遣う言葉が辺りに響く。
分担した片付けを終えた黄瀬が笠松の方に手伝いにくると
ちょうど笠松の方も終わったところだった。
「よし、終わったな。帰るか」
黄瀬は笑みをこぼして返事を返した。
着替えを終え、外に出ると、空から何かが降り落ちている。
「先輩、これ雪っスよ」
手をかざすと、手の平に白いものが落ちてはすぐに消える。
「道理で寒いと思ったな」
笠松も同じ様に空を見上げる。
「寒いっスね・・・」
黄瀬はブルリと体を震わせた。暖かく着込んでいるとはいえ、寒い。
笠松はそんな黄瀬を見て、ポケットに突っ込んでいた腕を
黄瀬の前にほら。といって差し出す。
黄瀬はためらいもなく、その腕に自分の腕を回した。
「やっぱり、人肌って暖かいっスね」
「こんなことはお前しかしねーからな」
笠松は少し照れながら、つぶやいた。
黄瀬はニッと笑みをこぼして、
「俺もセンパイの腕しかいらないっスよ」
笠松と黄瀬は腕組をしながら、歩いていった。
「飯食ってくか、黄瀬」
「いいっスね」
雪はパラパラと静かに降り注いでいた。
おわり